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最近あまりにもハルヒ系のupが無いので、射手座の試作品(プロローグ的なもの?)を投稿。
微妙に「星の海~」の死神設定を引き摺っております。

Read moreで射手座SS(会キョン←ハルヒ)


「はいコレ。ここに書いてある通りやって頂ければちゃんと勝ちますんで、指揮の方よろしくお願いします。」
「お前それが上官に作戦案を提出する部下の態度か。・・・・・・って、何度目だ、このやり取り。」
「そう思うんなら俺のこの態度は諦めてください。ちなみにこのやり取りは、おめでとうございます、今回でちょうど10回目ですね。」
「ああそうかい。」
 はぁ、と溜息を吐くのは黒の軍服、薄い銀フレームの眼鏡、切れ長の目と漆黒の髪、『大佐』の階級を示す襟章を身に付けた人物。齢は二十歳を超えて数年経った頃だろうが、落ち着いた雰囲気と上に立つ者らしい威厳とのおかげでもう少し上乗せした方が相応に見える。が、今は疲れたように心持ち背筋を曲げて部下からPC用の記憶メディアを渡されていた。
 そしてその部下―――男と同じく黒色の軍服を身に纏い、こげ茶色よりももう少し黒くした髪と目を持つ、どう見ても十代半ばから後半の少年は、『少佐』の階級を示す襟章でPCモニタの照明を反射させながらやや気だるげな仕草で直属の上司たる男に「あと、ついでにこれも。」と別の記憶メディアを指で摘まみあげる。
「これは?」
「次の戦闘の後、地球時間で半日もしないうちにもう一戦あるでしょうから、それ用の作戦っす。」
「・・・お前、そこまで読んでやがるのか。」
「そこまで読めなきゃ『C.O.』なんてやってられませんよ。」
 苦笑。少年は黒衣の大佐の手の平にそのもう一つの記憶メディアを落とすと、白い手袋に包まれた右手で自身の左の上腕に施された赤い刺繍を指差した。
 少年の腕には、自身の尾を噛む格好の蛇が一匹。遥か昔、人類がこれほどまで宇宙の広域に進出するなど考えられなかった時代の、地球上のとある神話の中に登場する生き物(神様もしくは象徴)だ。生と死を司るだとか、環状になることで一つの完璧さを表しているのだとか言われており、主に後者の伝承にちなんで今の彼らが属す国では『軍の特殊教育を受け、一定以上の(めざましい)成果を上げた者』に与えられる証とされている。尚、刺繍の色が赤いためこの証および証を受け取った人間のことを『クリムゾン・ウロボロス(crimson ouroboros)』と呼ぶ。略して『C.O.』。
 さらに補足として、この『C.O.』を受け取る人間は非常に少ない。どの分野を学び力を発揮するかは人それぞれだが、つまるところこの少年は何がしかの分野で天才(むしろ異才)と言われて可笑しくない人間なのである。
(かと言って上官にこの態度・・・俺以外の人間だったらすぐに軍法会議モンだろ。)
「ご安心を。あんただからこんな態度をとっているわけでして、他のエラそーなジジイども相手の時はもっとちゃんと受けの良いキャラを演じてますから。」
「他人の心を読むな。」
 飄々ととんでもないことを言ってのける部下に、溜息をもう一つ。
「・・・まあ、いい。これはあとで検めておく。それと別件なんだが・・・」
「別件ってか本来の目的なんじゃないんすか。わざわざ『黒の大佐』が俺の部屋に来た。」
「わかっているようだな。」
「そりゃまぁ・・・当の本人、ですから。」
 控え目に苦笑して少年は手元のモニタ上にとあるファイルを展開させた。
 軍の正式な書類の形式でもって届けられたその文章ファイルには近日中に少年が別の艦隊へ配属となる旨が記載されている。
 少年がこの黒衣の大佐の下に配属されてから丸一年、今のように砕けた会話を交わすようになってからは半年。どちらか(または両方)が致命的なミスを犯したり意思疎通が上手く行かず作戦に支障を来たしたことも無く、それどころか少年が配属されてからは元々周囲から一目置かれていたこの艦隊が更に賞賛を受けるようになっていたというのに、それは突然の配属先変更命令だった。だが実のところ、詳細を知る者にとってその話は然して驚くようなものではなかった。
「涼宮ハルヒ大佐、か・・・」
 大佐が呟くその名前。文章に記載された少年の新たな配属先の統率者は弱冠十八歳の少女であり、しかしながら天才的な頭脳とこの国(のお偉方)からは神聖視されていると言っても過言ではないある特殊な血筋を持っていた。
「『神人(カミヒト)』の娘・・・。ご先祖様が神様だったって言われてもなぁ?」
「ま、いいんじゃないんすか?こうして宇宙に出て来ても人間にはまだまだ解らないことが沢山あるんですし、遠い昔にいたという神様とやらの存在を認めてやっても。」
 カチカチとキーを叩きながら少年がゆるく口の端を持ち上げる。やがてモニタ上に何かパスワードらしきものを打ち込んでエンターキーを押すと、転属命令の文章ファイルの上に新たなウインドウが表示された。
「涼宮ハルヒ、女性、年齢は十八。異例の十六歳で士官学校をトップで卒業後、第一次ホメール戦役で目覚しい功績を挙げてメビウス勲章を授与される。たった二年で中尉から大佐にまで上り詰めた、運と実力あとおまけに美貌を兼ね備えた才女。・・・そして一応こうしてパスワードをかけるなりして公にされていないのが、『神人』の血筋であること。本人はそんな血筋のことなんて全く知らんのだがな。」
「さすが幼馴染。別れる十年前までの情報ならばっちりってか?」
「性格的な部分なら。と言っても、昔の俺はあいつに振り回されてばかりの情けない奴でしたけど。」
 大佐の揶揄に苦笑を返して少年は視線をモニタ上の見知った少女が成長した顔から現在の上官へと向ける。
「軍上層部の頭ガチガチなジジイどもは『神人』の血を引く人間の要請をなるべく叶えようとするでしょうから、この転属は俺が軍に居ることに気付いたハルヒの望んだことなんでしょう。どうして軍属なのがバレたのか不明なんすけど。」
 あいつが俺を探したいと思って、その感情にカミサマのチカラとやらが働いたんですかね?
 冗談半分でそう肩を竦める少年に大佐も「さぁな」と軽い口調で答える。薄い銀フレームの眼鏡越しに涼宮ハルヒの顔写真を眺めて、それから白い手袋に包まれた指をスッと伸ばしたかと思うとパチンと少女の写真を弾いた。
「こいつがどんな女だろうと、俺からお前を奪っていくことに違いはない。全く迷惑な話だ。」
「あはは。もう少しあんたの地位を上げてやりたかったんすけど、それももう無理っぽいですね。残りの期間でようやく准将に持って行けるかどうかってところでしょう。」
「しかもこの女はお前が『C.O.』だってことも知らないんだろ?余程気が早いのかお前に届いた新しい軍服・・・あの青色の。左の袖にウロボロスが入ってなかったじゃねーか。お前の価値も知らんと傍に置くってのが、俺からすれば無駄以外の何物にも思えん。」
「しょうがないですよ、ハルヒですから。あいつは個人の能力じゃなくて、『俺』だから欲しいみたいですし。加えて『C.O.』は一般閲覧可能なデータベース上に情報を公開してませんし、本人の申告と赤の刺繍が無ければ他人には判りにくい物。・・・たぶん昔の俺を思い出して、『ダメキョンの面倒はあたしがちゃんと見てあげなくちゃ!』とか思ってるんです、あいつは。」
「キョン、ねえ。今のお前にはちと可愛らし過ぎるあだ名だな?」
「確かに否定はしません。」
 少年が答えると、大佐はゆっくりと自身の両腕を少年の後ろから肩に回す。あまつさえ抱きしめるように腕をクロスさせるが、少年は特に気にした様子も無く上官のその動きを甘受していた。黒衣の大佐が自身の耳元に唇を寄せても。
「いつか必ずお前を俺の元に呼び戻してやる。俺の大事な『死神』を。」
「そう言ってもらえて光栄だよ。俺の大佐殿。」
 耳元で囁かれた言葉に微笑を返し、少年はモニタの電源を切った。
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